2016/01/22

ランニング時の適切な水分摂取について

すべてにおいて論理的根拠が求められる現代社会。

とりわけ医学において、患者様に行なう治療は、
徹底的にエビデンスを検討する必要があります。

それをEBM(Evidence Based Medicine)と呼びます。





特に集中治療の分野ではEBMが重要視されます。

重症な病態には、多くの治療介入を要するので、
過剰な治療が行われていないか、むしろ害のある介入をしていないか、
といったことを検証するよう心がけます。

臨床現場で医学的に妥当かどうか確信が持てない場合は、
すぐに論文検索し、最新のエビデンスを取り入れます。

このブログでは、トライアスロントレーニングに関係してそうな論文を紹介していきたいと思います。(レビュー)

記念すべきレビュー第一回は、ランニング時の適切な水分摂取について。


Hyponatremia among Runners in the Boston Marathon
(New England Journal of Medicine 2005,352, 1516-1518)

背景
マラソン走者にみられるレースに関連した死亡や生命を脅かす疾患の重大な原因として,低ナトリウム血症が浮上している.低ナトリウム血症の発症率を推定し,主要な危険因子を特定するため,マラソン走者のコホート集団で研究を行った.  
方法
2002 年ボストンマラソンの参加者を,レースの 12 日前に募集した.対象者は,人口統計学的情報やトレーニング歴に関する調査に回答し,レース後,血液検体を提供し,レース中の水分摂取量や尿量を詳しく記入するアンケートに回答した.レース前後の体重も記録した.多変量回帰分析を実施し,低ナトリウム血症に関連する危険因子を同定した.  
結果
組み入れた 766 人の走者のうち,466 人(64%)が使用可能な血液検体をゴール地点で提供した.13%で低ナトリウム血症(血清ナトリウム値 135 mmol/L 以下)がみられ,0.6%では重度(120 mmol/L 以下)であった.単変量解析では,体重が大幅に増加したこと,レース中に 3 L を超える水分を摂取したこと,1 マイルごとに水分を摂取したこと,レースのタイムが 4 時間を超えたこと,女性であること,そして体格指数が低いことが低ナトリウム血症と関連していた.多変量解析では,体重が増加したこと(オッズ比 4.295%信頼区間 2.28.2),レースのタイムが 4 時間を超えたこと(タイムが 3 時間 30 分未満であった場合と比較したオッズ比 7.495%信頼区間 2.923.1),ならびに体格指数が極端であることが低ナトリウム血症と関連していた.  
結論
低ナトリウム血症は,一般のマラソン走者のかなりの割合で発生し,重症になる可能性がある.走行中に体重が大幅に増加すること,レースのタイムが長くなること,そして体格指数が極端であることが低ナトリウム血症と関連していたが,一方で,女性であることや,摂取した水分の組成,非ステロイド性抗炎症薬の使用とは関連していなかった.

つまり、レース前後で体重の増えた人(過量の水分摂取者)、レースタイムが遅い人(4時間以上)BMIが低い人は低ナトリウム血症のリスクが高いことがわかりました。

喉が渇いたタイミングで、喪失した分だけを、水分摂取するのが良いということになります。

「喉が乾く前にしっかり水分摂取を!」という、昔よく耳にしたスローガンは間違いだったことがわかります。



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